国際行政書士斉藤事務所
2026/09/21

新築の家を買うとき、欠陥への保証・保険をどう確かめる?

新築の購入前に、欠陥が出たときの対応を知る

1 あえて、少し特殊なケースで考えます

新築の家を取得するときは、ハウスメーカーなどに建ててもらったり、販売会社から新築住宅を買ったりするのが一般的です。今回は、間に個人の売主が入るケースを考えてみます。契約相手が変わることで、欠陥があったときの請求先や、保険・保証で確かめたいことが見えてきます。

Aさんは、B社から土地を買い、C社に注文住宅を建ててもらいました。ところが、一度も住まないままEさんへ売ることになりました。Aさんは事業として売却しない個人、B社は土地の売主、C社は建築会社です。C社はD保険の住宅瑕疵担保責任保険に加入しているものとします。筆者はAさん側の仲介の宅建業者です。

図1 登場人物と4つの契約関係
B社 (土地の売主) Aさん (売主・個人) Eさん (買主) C社 (建築会社) D保険 (保険法人) ①土地の売買 ②工事請負・ 建物の引渡し ③保険契約 ④今回の売買 (未入居のまま) 契約なし 契約なし

保証の引継ぎ等をする前の基本関係です。点線は、EさんとC社・D保険に直接の契約関係がないことを示します。

図は左右に動かして読めます。

もし、Eさんが買ったこの家に欠陥があり、引渡し後に分かったら、どうなるでしょうか?
Aさんに言うのか、建てたC社に言うのか。それとも保険で直してもらえるのでしょうか。

2 欠陥があったら、誰に何を求める?

まず、売主Aさんに修理を求めます

Eさんが売買契約を結んだ相手はAさんです。引き渡された家が契約で約束した状態に合っていなければ、契約不適合として、Aさんに修補(不具合の修理)などを求めることができます。欠陥の原因、契約内容、期限や有効な特約を確かめて対応します。参照:民法562〜566条東京都・引渡し後の不具合への対応

Aさんは建築会社ではありませんが、新築住宅の売主として、品確法95条の対象部分について責任を負います。個人だからこの責任がなくなるわけではなく、買主に不利な免責・短縮もできません。Aさんは、元の注文者としてC社に施工の責任を求めます。参照:品確法94条・95条国土交通省・個人売主への適用

図2 今回のケースの請求先と、保証を整えた場合の追加の道
売買・請負・保険の請求先と、保証の約束が整った場合の請求先 EさんからAさんへ売買の請求、AさんからC社へ請負の請求、C社からD保険へ保険金の請求。C社がEさんへの保証を約束し必要な手続きを整えた場合には、EさんからC社への保証請求を金色の点線で示す。 Eさん買主 Aさん売主・元の注文者 C社建築会社 D保険保険法人 ① 修補等を請求売買・95条等② 施工の責任を求める請負・94条等③ 対象費用を保険請求保険契約 EさんからC社への保証に基づく請求 点線:C社がEさんへの保証を約束し、必要な手続きを整えた場合

実線は基本の請求先、金色の点線は保証の約束等が整った場合の請求先です。矢印は、修理費などが全額支払われることを示すものではありません。

転売特約等を整えれば、C社に求められる場合もあります

Aさんから家を買うだけでは、AさんがC社に持つ権利がEさんへ自動的に移るわけではありません。そこで、転売特約を利用できるか、C社がEさんへの保証を約束するか、必要な手続きは何かを確認します。条件が整えば、Eさんがその保証に基づいてC社へ修補を求める道も考えられます。参照:国土交通省・転売時の権利と保険(17頁)同・転得者への責任の説明(3頁)

特約名や保険証書があるだけで、すべて完了しているとは限りません。C社の保証対象、残期間、申請・承認の状況を確認します。また、転売特約を付けても、新築売買で生じたAさんの95条の責任が当然に消えるわけではありません。参照:品確法95条。手続きの確認は、上記制度を踏まえた実務上の提案です。

修理以外に求められることは?

修補

契約に合う状態に直してもらう。

代金の減額

相当の期間を設けて修補を求めても直されない場合などに、不適合に応じた減額を求める。

損害賠償・解除

賠償には相手に責任を負わせられる事情等が必要。解除も、相当の期間を設けて修補を求めても履行されず、不履行が軽微でない場合などの条件がある。

これらは必ず順に進む手続きではありません。修補できない場合等には、事前の催告なしで減額・解除が認められることもあります。Eさん側の責任で生じた不適合は、修補・減額等を請求できない場合があります。Aさんの代金返還などの負担が、そのままC社や保険から補われるとは限りません。参照:民法415条・541〜543条・562〜564条住宅瑕疵担保履行法2条

3 一般的なケース:Eさんが直接注文する場合

ここまでは、個人の売主Aさんが間に入る、少し特殊なケースで考えてみました。一般的な家の取得方法の一つは、EさんがC社に直接、新築工事を注文する形です。この場合、Eさん自身が請負契約の注文者なので、C社に修補等を求めます。対象部分には品確法94条が適用されます。請負で減額を求める対象は、売買代金ではなく工事の報酬です。参照:品確法94条民法559条・562〜564条・637条

図3 EさんがC社に直接注文した場合の請求先
注文者から建築会社への請求と、建築会社から保険法人への請求 Eさんは建築会社C社へ直接注文した人です。EさんからC社へは請負契約に基づく修補等の請求、C社からD保険へは保険対象の費用の請求を示しています。 請負契約に基づく 修補等の請求 保険対象の費用を 請求 Eさん 注文者 C社 建築会社 D保険 保険法人

C社が瑕疵保険に加入している例です。EさんのC社への請求と、C社のD保険への保険請求は、それぞれ条件を確認します。

直接注文なら、元の注文者から権利を引き継ぐ問題はありません。それでも、希望した仕様、完成した状態、修理窓口、責任の期間、保険で補われない負担の確認は必要です。C社の「保証があります」という説明だけで、すべての不具合が無償になるとは限りません。

4 不具合に気づいた後の通知は、早めに

「10年責任があるから、連絡も10年以内ならよい」とは限りません。種類・品質の不適合については、原則として知ってから1年以内に相手へ通知する必要があります。品確法94条3項・95条3項も、この通知規定を読み替えて適用します。参照:民法566条・637条品確法94条3項・95条3項

図4 買い方によって、通知する相手が変わります
今回の特殊なケースと、直接注文する一般的なケースの通知先 今回の特殊なケースでは、買主Eさんから売主Aさんへ民法566条の通知、Aさんから建築会社C社へ民法637条の通知を行います。一般的なケースとしてEさんが直接注文した場合は、注文者EさんからC社へ民法637条の通知を行います。それぞれの契約の期限を確認します。 今回の 特殊なケース 直接注文 する場合 (一般的なケース) Eさん 買主 Aさん 売主 C社 建築会社 Eさん 注文者 C社 建築会社 通知 民法566条 通知 民法637条 不具合を通知 民法637条 各契約の期限を確認

売買・請負の相手への通知と、D保険への事故連絡は別です。保険の窓口・期限・方法も確認します。

期限を過ぎると、原則、その不適合を理由とする修補・減額・損害賠償・解除ができなくなります。ただし、相手が引渡し時に不適合を知っていた場合や、重大な過失で知らなかった場合には例外があります。有効な特約も確認します。参照:民法566条・637条

1年以内に必要なのは通知で、訴訟そのものではありません。ただし、通知後も消滅時効等は別に問題になります。保険の支払条件も別であり、「通知を忘れたら保険全体が一律に失効する」とは扱えません。参照:国土交通省・通知の説明(2〜3頁)民法166条。保険は個別約款を確認します。

写真・場所・症状・発見日を記録して連絡する。仲介に伝えただけで通知が済むとは限らないため、契約上の相手に届いたことも確認します。修理を進める前に、保険の窓口へ調査や書類の手順を確認することを勧めます。

5 Eさんが契約前に確認すること

確認のゴールは、「欠陥があったら誰へ連絡し、どの範囲で対応してもらえるか」が説明できることです。特殊ケースでも直接注文でも、確認できたこと・未確認のこと・手続きが必要なことを分けます。

同じ質問を、2つのケースで確かめます
確認することAさんから買う場合C社に直接注文する場合
何を、どんな状態で受け取る?物件の状態、不具合・修理歴、設備の作動、図面・検査資料。仕様書・図面・見積りとの一致、変更内容、完成検査・設備の作動。
誰が、いつまで対応する?Aさんの売買責任、C社へ求める方法、元の引渡日と残期間。C社の請負責任、Eさんへの引渡日、対象ごとの責任期間。
保険・保証は使える?転売特約や保証承継の可否、必要な合意、手続きの完了。保険加入の内容とEさんへの書類交付、C社・メーカー等の保証条件。
自分の負担と連絡先は?Aさんの免責範囲、保険の対象外・自己負担、Aさん・C社等への通知方法。C社の責任範囲、保険の対象外・自己負担、C社等への通知方法。

確認の基礎:品確法94条・95条民法562〜566条・637条国土交通省・住宅瑕疵担保責任保険。表は実務上の確認項目です。

「保証なし」は、何を意味するのか確認します

設備のメーカー保証がないことと、売主等へ修理を求められないことは同じではありません。保証書の有無・承継条件を調べたうえで、AさんやC社が負う責任は、契約の条項で確認します。転売したらメーカー保証がすべて切れる、と一律に決めつけることもできません。参照:民法522条・562条消費者庁・製品保証Q25

Aさんが免責を希望する場合も、対象となる設備や不具合、責任を残す範囲を具体的に合意します。知りながら告げなかった事実は、免責特約があっても責任を免れません。新築の95条対象部分を買主に不利に免責することもできません。参照:民法572条品確法95条2項

口頭の説明と、契約書類の内容を揃えます

Aさんからの購入では、責任の履行措置の有無・概要は重要事項説明に関わり、責任等についての合意は契約書面にも関わります。通知期限・窓口・遅れた場合の影響も具体化し、説明と契約を揃えることを勧めます。C社への直接注文なら、請負契約・保証書等で同じ確認をします。参照:宅建業法35条1項13号・37条1項11号民法522条

手続きが未完了なら、完了予定と、利用できなかった場合の扱いも相談します。書類があることだけで安心せず、Eさんが利用するための条件まで確認しておくことが大切です。

6 Aさんが売却前に備えること

Aさんは、Eさんに売った後も、売主として対応する立場です。一方で、C社へ建築を注文した立場も、売却だけで当然になくなるわけではありません。Eさんから連絡があれば、C社への通知や調査・修補の調整につなげられるようにします。参照:国土交通省・転売後に残る権利(17頁)

図5 家を売った後も、Aさんには2つの立場があります
Eさんに対しては「売主」

売買で負う責任を確認し、不具合の連絡に対応する。

C社に対しては「元の注文者」

残る権利と期限を確かめ、施工の責任を求める。

家の所有者はEさんに変わります。立入りや修理には、Eさんとの調整も必要です。

  1. 状態を伝える。分かっている不具合・修理歴・設備の状態を整理し、Eさんへの説明に反映する。
  2. 引継ぎを整える。C社へ売却後の対応、転売特約・保証の承継、必要な費用と手続きを確認する。
  3. 連絡と記録を残す。契約書・保証書等を引き継ぎ、Aさんの協力内容や窓口を具体化して、控えを保管する。

Aさんがすべてを自分で修理するという意味ではありません。Eさんへの責任を果たしながら、C社に求められる対応を確かめる備えです。保険で補われない負担が残る可能性も含めて確認することを勧めます。

7 補足のQ&A

Q 契約前に分かった傷も、あとで直してもらえる?

その状態を含めて何を合意したかによります。修理して渡すのか、現状を了承するのかを明記します。説明を受けたことだけで、すべての責任が免除されるわけではありません。参照:民法522条・562条品確法95条2項

Q C社が倒産したら、保険へ直接請求できる?

倒産等を含め相当期間責任が履行されない場合には、直接請求を利用できることがあります。誰が請求できるか、転売後の扱い、対象費用は保険ごとに確認します。C社が対応しないだけで直ちに利用できるとは限りません。参照:住宅瑕疵担保履行法2条6項国土交通省・瑕疵保険の説明

Q 販売会社F社から建売住宅を買う場合は?

Eさんが売買で取得するなら、まず売主F社へ請求します。新築の対象部分には95条が関わります。建てたC社と売るF社が系列でも、契約相手や保証窓口が同じになるとは限りません。参照:品確法95条民法562条

Q 土地の問題も、建物と同じ保険・保証で考える?

同じ扱いとは限りません。今回のEさんの売主はAさんで、B社へ当然に直接請求できるわけでもありません。土地の契約と原因を確認し、地盤が建物の欠陥に関係する場合はC社の責任も別に検討します。参照:民法562条品確法94条・95条