工事経歴書の書き方を図解|目的からわかる記入と集計のポイント
工事経歴書で伝えるのは、「この会社が、どんな工事を、どの規模で、どんな体制で施工したか」です。この目的を押さえると、業種の分け方、配置技術者、小計・合計の意味がつながります。
ここでは、福岡県知事許可で経審を受けず、完成・引渡し時に売上を計上するA社を例に説明します。許可業種は、とび・土工と塗装。事業年度は2025年6月1日から2026年5月31日までです。図の金額は税抜・千円単位、会社・工事・人物は架空です。
1 会社の実績を、他の人が確かめられる形にする
工事経歴書は、許可業者が決算変更届に添付する書類です。毎事業年度が終わってから4か月以内に許可行政庁へ提出し、その年の実績を更新します。工事経歴書は閲覧の対象となり、発注者などが会社を選ぶときの判断材料になります。[1][2]
だから、「自社で分かればよいメモ」では足りません。誰が読んでも工事の種類や規模を同じように捉えられるよう、共通の様式で記録します。業種別の実績は、公共工事の経営事項審査でも評価の基になります。
発注者は、売上の大きさだけでなく、どの業種の工事を、どの規模で施工したかを見ます。業種を勝手に変えたり、重複計上したりすれば実績を比較できません。共通の記載ルールが、数字の意味をそろえています。
作成するときは、前年の書類を写す前に、工事台帳、契約書・注文書、請求書、技術者の配置記録をそろえます。契約と実際の施工を、書類の各欄に置き換える作業だと考えてください。台帳で全体を整理してから様式へ移します。
2 売上を集めたら、まず工事を仕分ける
工事経歴書に書く対象は、建設工事です。資材の販売だけ、機械の貸出しだけの取引まで入れると、会社の施工実績が実際より大きく見えてしまいます。契約名だけでなく、何を完成させる約束だったかを確認します。
A社の当期売上は100,000千円です。これを、建設工事の完成工事高69,000千円と、工事ではない兼業事業売上高31,000千円に分けます。まず「工事かどうか」、次に「どの業種か」、最後に売上へまだ入っていない未成工事も確かめる順番です。
横にスクロールして図全体を確認できます。
人工出しは、この例では工事の完成を請け負わない労務提供。機械レンタルはオペレーターなしです。名称だけでなく契約と作業の実態で分類します。
図の完成工事高は、とび・土工50,000千円、塗装15,000千円、防水4,000千円です。防水は未許可業種ですが、各工事が適法に請け負える軽微な工事という前提です。小さな工事でも、工事の売上を兼業事業売上高へ移すわけではありません。
当期の完成工事には、前期に着工し、当期に完成した工事も含めます。完成工事を施工内容に応じて振り分け、工事経歴書は業種ごとに作成します。業種名は、契約書や施工内容に照らして確認します。福岡県では、届出をしない業種の実績も「その他」の工事経歴書にまとめる扱いです。A社は、とび・土工、塗装、その他の3区分で作成します。[3]
3 主たる工事と附帯工事は、一体で捉える
一つの現場に複数の作業があっても、何を完成させるために受けた工事かを先に確認します。主たる工事と附帯工事の関係で考えてみましょう。
主たる工事は、注文の目的の中心となる工事。附帯工事は、その施工のため、又は施工の結果として必要になる他業種の従たる工事で、それ自体に独立した使用目的がないものです。「メインが高額、サブが少額」というだけでは決まりません。[4]
タイル工事の実績にする
タイルの附帯にはならない
定義を当てはめた仮の例です。実際は図面・仕様・契約内容から、一体で行う必要性などを総合判断します。
工事経歴書は原価の内訳表ではなく、請け負った工事の実績を示す書類です。附帯部分を切り出して別業種の実績にしたり、主工事に全額を書いたうえで附帯部分を重ねて書いたりしません。塗装のための足場を、塗装工事に含める扱いも同じ考え方です。[5]
例えば、主工事と附帯工事の内訳を二つの業種へ分けると、合計額が同じでも、請け負った実績の分類が変わります。全額を主工事に書き、附帯分も別に書けば、今度は金額が二重になります。見積りや原価管理で内訳を分けることはできます。判断に迷う複合工事は、金額だけで按分せず、契約内容を示して提出先に確認します。
4 各欄は、「誰に何を伝えるか」で埋める
業種を決めたら、主な完成工事を請負代金の大きい順に書きます。経審を受けるかどうかで記載範囲は異なるため、件数は提出先の要領に従います。実績のない許可業種も、福岡県では「実績なし」と記載して提出します。[3]
| 欄 | 伝えること | 記載の考え方 |
|---|---|---|
| 注文者/元請・下請 | 誰から受注したか | 直接の契約相手を書く。発注者から直接受けた工事は元請、他の建設業者から下請として受注した工事は下請。 |
| 工事名/工事現場 | 何を、どこで施工したか | 業種と施工内容が伝わる名称、所在地を書く。 |
| 配置技術者 | 誰が施工を管理したか | 完成工事に実際に配置した主任技術者・監理技術者の氏名と区分を書く。 |
| 請負代金の額 | どの規模の工事か | 変更契約も反映した請負金額を確認し、所定の単位と税込・税抜の扱いに合わせる。 |
| 工期 | いつ施工したか | 着工年月と、完成又は完成予定年月を書く。完成工事には実際の完成年月、未成工事には完成予定年月を記す。 |
例えば、塗装工事の1行なら
注文者:元請E社/下請/工事名:工場外壁塗装工事/現場:○○県○○市/配置:主任技術者G/請負代金:2,000千円/着工:2025年10月/完成:2025年11月。
氏名・所在地等は、提出先の記載要領に沿って書きます。
下請工事の注文者は、建物の持ち主ではなく、自社へ直接発注した契約相手です。また「修繕工事」だけでは、どの業種の実績か伝わりません。「工場外壁塗装工事」のように内容が分かる名称を使い、契約書・請求書との対応も追えるようにします。
配置技術者の欄に、資格を持つ人や営業所の技術者の名前を機械的に入れてはいけません。その工事で、実際に施工管理を担った人を書く欄です。
5 小計は「書いた分」、合計は「その業種の全部」
工事経歴書の明細には、主な工事を選んで書きます。だから、明細の金額を足しただけでは、その業種の年間実績にならない場合があります。小計はそのページに書いた完成工事の合計、合計は省略した分も含む、その業種の完成工事の総額です。複数ページになる場合、小計はページごと、合計は最終ページに書きます。
小計36,000 + 省略分14,000 = 合計50,000。図1のとび・土工の金額と一致します。記載件数は説明用の例です。
図3では、記載した5件の小計は36,000千円ですが、年間のとび・土工の実績は14件50,000千円です。残り9件を明細に書かなくても、その14,000千円が消えるわけではありません。省略した完成工事も、台帳には残して合計へ含めます。「うち元請」は総額の内数なので、総額へさらに足しません。この例の会社では、期末に完成していない工事は主な未成工事として記載し、完成工事の小計・合計から外します。
6 最後に、同じ実績が他の書類につながるか確かめる
業種ごとの合計が出たら、「直前3年の各事業年度における工事施工金額(様式第三号)」の当期欄へつなぎます。各業種を足した計は、損益計算書の完成工事高と照合します。
A社なら、様式第三号の当期欄に、とび・土工50,000千円、塗装15,000千円、その他4,000千円を記載し、計69,000千円を確認します。比べる相手は、損益計算書の「売上高全体」100,000千円ではなく、その中の「完成工事高」69,000千円です。
横にスクロールして図全体を確認できます。
上段は完成工事高の流れ。下段の点線は、工事ではない売上が損益計算書の兼業事業売上高へ入る流れです。
兼業事業売上高31,000千円は、工事経歴書と様式第三号を通らず、損益計算書へ入ります。完成工事高69,000千円と合わせると、売上高100,000千円になります。未成工事15,000千円は、この会社ではまだ売上の外にあるので、ここに足しません。
合わないときは、工事の拾い漏れ、二重計上、業種の振分け、未成工事の混入、税込・税抜や計上時期の違いを順に確認します。必ず台帳や契約書まで戻って理由を確かめてください。最後は、①業種の分け方、②期末の完成・未成、③実際の配置、④小計と合計、⑤他書類との一致の順に点検すると、確認の抜けを減らせます。
工事経歴書は、会社の施工実績を確かめるための書類です。契約と施工体制を各欄へ写し、小計・合計を分け、他の書類へ同じ実績をつなぎましょう。